プロバイダから意見照会書が届いた!
ある日突然、誹謗中傷の発信者情報開示請求をされるというのは、訴訟と無縁な生活を送る人にとっては恐怖が大きいことでしょう。
しかし、意見照会はあくまで手続きのスタートに過ぎません。
また、権利侵害はないと反論できる場でもあります。
ここでは「意見照会書が届いたときに自分でできる反論」をパターン別ごとに紹介していきます。ぜひ参考にしてください。
はじめに
発信者のもとにプロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたということは、Twitterなどに書き込んだ内容が誹謗中傷にあたるとして、IPアドレス開示の仮処分が出ているということになります。
ただし、仮処分の段階ではこちらに反論の機会はありません。あくまで迅速な手続きに過ぎず、ひっくり返る可能性もあります。
つまり、大切なのは「意見照会書で適切な反論をすること」です。
意見照会書の作成は、弁護士に依頼することもできれば自分で書くこともできます。
では、意見照会書でどのような反論をすればよいのでしょうか。
誹謗中傷の内容をもとに、次の3つのパターンに分けて解説していきます。
①名誉毀損型
名誉棄損型は「藤吉修崇は弁護士資格を持っていない」など、事実無根の内容で対象者の評判を落とす書き込みが該当します。
この場合発信者としては、書いた内容が真実なら根拠を示すこと、真実でないなら投稿によって評判が下がっていないことを主張することが可能です。
例:彼は単なるYouTuberだと認識されている(弁護士とは認識されていない)
最近、比較的有名なビジネス系YouTuberの経歴詐称が話題となりました。
仮に彼の経歴が嘘だったと批判して開示請求を受けたなら、経歴詐称の裏取りをした上で資料を添付し、根拠があったと意見照会書で丁寧に記載するとよいでしょう。
書いた理由も、被害者を増やさないためなどとあくまで正当な理由があったのだということをアピールします。
②プライバシー暴露型
プライバシー暴露型は「こいつにはこんな秘密がある」などと相手が公開していない内容に関する書き込みが該当します。
すでにネット上で広まっている情報であれば「書き込み前から公になっている」と主張するとよいでしょう。
一方、ポイントは「書き込んだ内容に何らかの価値がある場合は誹謗中傷にならない」という点。
「あの弁護士が不倫している!」などと書いた場合、一見プライバシーを侵害しているように見えます。
しかし、この弁護士が離婚問題を仕事としていた場合はどうでしょうか。
パートナーの不倫に悩んで弁護士を探している依頼者にとって、弁護士自身が不倫しているか否かは、弁護士を選択する上で重要な判断材料になりますね。
つまり、このような理由によって書き込みが誹謗中傷に当たらないと判断される可能性もあるのです。
③侮辱型
侮辱型は、容姿や人格の否定など書かれた側の心情を著しく害する書き込みが該当します。
この場合重要なのは、書かれた側がどの程度我慢の限界を超えていたかという点です。
客観的に証明するのは少々難しい部分ではありますが、書かれた側の普段の言動や立ち振る舞いを軸に反論をしていくのがよいでしょう。
例えば、あるYouTuberに「気持ち悪いんだよハゲ」と言及したとして開示請求された場合。
彼が、YouTubeのサムネイルなどでわざとインパクトのある変顔をしてそれを売りにしていたり、他の人に対して普段から同じように悪口を言っていたりするのであれば、そこを主張すれば「誹謗中傷に当たらない」となる可能性はあるでしょう。
最後に
強調しておきたいのは、これは開示請求を逃れるためのテクニックではないということ。
匿名で誹謗中傷をするべきではないし、軽い気持ちだったとしても相手を深く傷つけていたのなら反省すべきです。
私の事務所に来る開示請求された人の相談でも「それは訴えられて仕方ない」というケースが多いのが事実です。
誹謗中傷は根絶すべき。
書いた側はちょっとした嫌がらせのつもりでも、書かれた側は生きているのが苦しいほど精神的に追い詰められることもあります。
僕も、苦しみ続けて弁護士を頼ってきた人のために、長年にわたり誹謗中傷問題に取り組んできました。
発信者情報の開示請求は、こうして苦しむ人たちを助けるためのものなのです。
一方、懸念すべきは、誹謗中傷にあたるか微妙なラインの書き込みにまで開示請求をちらつかせ、書き込んだ相手を萎縮されるようなケースも増えてきていること。
そのようなケースは、法律の使い方を完全に誤っていると考えられ、かつ本当に苦しんで困っている人が開示請求をする上での悪影響にもなると考えられます。
真っ当な批判で開示請求をされたとしても、そして万が一開示の仮処分決定が出ているとしても、まだ諦める必要はありません。
これまでのことを参考に、意見照会で主張すべきことを行いましょう。
弁護士に依頼するのも一つの方法ですが費用がかかります。
スラップ気味の無理な開示請求は自分でも対応可能であると知っておいてください。
誹謗中傷は無くすべきですが、批判とはきちんと区別されるべきなのです。
開示請求は、ネット上で謂れのない悪意を向けられた人を助けるためのもので、自分の反対意見を封殺する道具では決してありません。
開示請求が怖くて批判の一つも言えない、建前と賞賛の声ばかりのインターネットなんてつまらないですよね?
こちらの動画 では、私が誹謗中傷問題に取り組む理由を語っていますので、ぜひ参考にしてください。
できればチャンネル登録などをしてもらえると泣くよ。